唐突だけど、俺はいま恋をしているらしい。
らしい、なんて自分のことなのに何を曖昧なことをと思うかもしれない。だけど、出来ればそこのところは大目に見て欲しい。何と言っても、こんな気持ちを抱くのは初めてのことなのだ。はっきりと「これは恋だ!」と言い切れる経験も物証もないのだから、曖昧になってしまうのもむべなるかな、だ。
齢二十二にもなって恋の一つもしたことがないのか、と友人には呆れられてしまう俺の恋愛遍歴は、本当に悲しい推移を辿って現在に至っている。
幼稚園では、女子どころかガキ大将に愛されて(いじめられて)過ごし。学院に入る頃には祖父が経営する本屋の手伝いが楽しくてそれどころではなく。そして学院卒業後は体調を崩し始めた祖父から引き継ぐ形で、本屋の店主として働き始めた。
もちろん今も俺の職業は本屋の店主だ。そんな俺に、出会いの場などあるわけがない。
お客さんとの出会いがあるだろうって? ところがどっこい、ウチが取り扱う本は少し特殊なものばかりなのが原因で、若い女性はあまりやってこないのだ。
ではどんなものを扱っているのかというと、一般にはあまり出回らないような魔法関係の術書や論文、研究資料本が大多数を占めている。いわゆる学術書に分類される本ばかりなのだ。
魔法研究学会の雑誌から、目玉が飛び出るような額の研究書まで何でもござれ。学者の方や管理局の研究者諸氏には足繁く通っていただいている方も多いのだが、いかんせんそういった人達は若くない。どちらかといえばお年を召した方ばかりだ。
しかもその中で女性となると更に少ない。というか、そもそも女性と言ってもおばあさんに近い年齢の人ばかりなのだから、恋だの愛だのなんて関係になることはありえない。俺は普通に若い子がタイプだからだ。
しかしながら、そんないかにも堅苦しい本ばかりをそろえたウチに、若い女の子がやってくるはずもない。何しろ漫画が一冊もないぐらいなのだ。そんな本屋にやってくる女の子は、よほどの変わり者だけだろう。
でも、そんな出会いのない生活に不満があるわけでもなかったりする。俺は祖父が趣味で始めたこの本屋が昔から好きだった。かび臭い紙の匂いは俺には心地よく感じたし、人気のないジャンルを揃えたがゆえの静かな店内はゆったりとした時間が流れている。
そんなこの空間が、俺は小さな頃から大好きだったのだ。
だから今の生活にも、大きな不満がない。出会いがないのは残念だなと思うが、しかしそのためにこの店を手放す気には到底なれないのだった。
何年か前にそんな俺を心配した常連のおばあさんが、知り合いを紹介しましょうかと気を利かせてくれたこともあったが、俺はやんわりとそれを断っていた。
俺はこの店を手放す気はないし、違う仕事を探す気もない。そんな俺の生活は、同年代の大半が抱く理想の生活とはかけ離れたものだと自覚している。だからこそ、無理に付き合わせてもお互いにいいことにはならないだろうというのが、俺の考えだった。
それ以来、そのおばあさんからその話が出ることもなかった。俺が考えを変える気がないとわかってくれたのだろう。悪いことをしてしまったかとは思うが、仕方がないことだとも思っている――。
……はずだったのだが、このたび俺はどうやら恋をしたらしい。
といっても、そんな気持ちに気づいたのは本当に最近だ。一年ほど前からこの店に顔を出すようになった女の子のことが、どうにも気になって仕方がないのだ。
始めは若い子(なんと今年で十六だそうだ)が店にいるのが珍しいから、目が離せないのだと思っていた。実際、学院卒業時からの長い店主暦の中でもここまで若い女の子の姿がこの店にあるのは初めての光景だ。物珍しさから目で追ってしまうのも当然だと思っていた。
しかし、目で追っているうちに声を聞き、親しくなってくると話をし、そうして笑みを交わし合うようになると、自分の気持ちが大きく変化しているのに気がついた。
もっと笑顔が見たい。もっと話がしたい。そんなことを思うようになっていた。
そんな気持ちを何と言えばいいのか、俺は知らなかった。しかし、曲がりなりにも本屋として沢山の本から得た知識から推察するに、この気持ちこそが恐らく恋なのだと俺は思った。
わかってしまえばすっきりするもので、俺は22にしてようやくまともな恋愛を経験したのだ。尤も、恋愛と呼ぶにはあまりに拙い、一方的な片思いではあったのだが。
それ以来、彼女が店に来るたびに、俺はほんの少しの高揚とともに彼女を迎えることになる。適当な話題を振り、それなりに話し、笑いあって、別れる。そんな生活だったが、俺は小さな幸せを感じていた。そして、それだけで俺には充分だったのである。
――俺は、この気持ちを告白するつもりがなかった。
何と言っても、相手は十六歳。優に六年もの差が俺と彼女の間にはあるのだ。
いくらこの世界が年齢については大らかな世界だとは言っても、六歳差というのは結構大きい。特に彼女のような年齢での六歳差は本当に大人と子供ほどの差のようにも感じられるだろう。
だからこそ、俺は告白するつもりはなかった。彼女が店に来たら適当に会話をして別れる。これだけで、よかった。
なにより、俺なんかよりもずっと世界で活躍している彼女が、そもそも俺の告白に応えてくれるわけがないという考えもあった。
だから、いずれにしてもこの気持ちが叶うことはないのだ。そう気持ちに蓋をして、俺は今日も店のカウンターでぼうっと外に繋がるドアを見る。
次に彼女が来るのはいつだろうか。そんなことを考えながら。
*
外から聞こえてくる街の喧騒は若干遠い。大通りから外れた道を入った先にあるこの店は、探さなければ見つからないほどだ。微かに聞こえるざわめきは、ここに辿り着く頃には囁くような音量になっていた。
そんな静かな店内に、今は一人も客はいない。もともとかなり限定された用途でしか訪れない店だ。誰かいるほうがこの店にとっては珍しいことなのである。それでも、一定の需要があるから店は成り立っているのだが……。
そんな取り留めもないことを考えていると、ドアの向こうに誰かが立ったらしく、人影が映る。俺は僅かに姿勢を正すと、ドアベルの音とともにやってきたお客様に、いつものように声をかけた。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
微笑みとともにそんな言葉を返され、俺の表情も少しだけ緩む。
お客様に声をかけられて、嬉しくない店主はいない。まして、それが片思い中の相手からともなれば、尚更だった。
今日は暖かいですね。そうだな。なんて定番の会話を交わしながら、彼女がカウンターの傍まで近づいてくる。こうして気兼ねなく会話できるのも、他に客がいないからだ。
だから、基本的にお客様が来ると二人きりになることが多い。そのことに関して言えば、限られた需要しか取り揃えなかった祖父に、俺は心から感謝していた。
「ああ、そういえば、この前買っていたものと同系のものを数冊仕入れてみたんだ。教導に使うんなら、比較対象もあったほうがいいと思って」
俺はふと彼女が先週顔を出した時に買った本を思い浮かべながら、先日入荷した書籍リストを頭に描く。いわゆるマルチタスクという多重思考技術だった。魔導師としての能力は欠片もない俺だが、便利そうだったので習得した技術だった。
そして、その俺の言葉に、彼女はぱっと顔を明るくさせた。
「本当ですか? わぁ、ちょうど他の視点からの意見も欲しいと思っていたから、助かります!」
「なら、仕入れておいてよかったよ。本屋冥利に尽きるというもんだ」
そう冗談めかして言うと、彼女は小さく噴き出して「なんですか、それ」と可笑しそうに笑う。俺も釣られるように小さく笑みをこぼし、店の中は和やかな雰囲気で満たされる。この自然で居心地のいい時間が、俺はとても好きだった。
――彼女との付き合いは長い。
彼女がまだ十六の頃からだから、今年で三年近くにもなるだろうか。その間、彼女がウチの店から離れてしまわなかったことが、俺にとって一番の幸運であったことは疑いようのない事実である。
その三年の間に、彼女はもっと美しくなった。どこか子供らしかった面立ちは、少しだけシャープになって大人らしくなり。身体のラインも女性だと思わせるような、より起伏のあるボディーラインに。あどけなかった笑顔は、可愛らしくも女らしい柔らかな笑みへと移ろい変わっている。
そして何より、ほんのりと香る匂いが俺の知る昔の彼女とは明らかに違う。柑橘系のものだろうか、微かに香る香水が、大人になったのだと強く思わせるのだった。
魅力的になった笑顔に加え、不快にならない程度の香水の香りは少なからず俺の意識を削る。衝動的に告白してしまおうかとも思えてくるほどだ。
三年の間に、彼女は変わった。気をつけていなければ、本心を曝け出してしまいそうになるほどには。
「――そんなわけで、今は四人の子の教導をしているんです。その中でも特にティアナっていう子がいるんですけど、その子は本当に先が楽しみになるような才能があるんですけど……、……あの?」
「っあ、ああ。どうした?」
はっと我を取り戻して、何とか取り繕う。
いけない、つい見惚れてしまっていた。自分の内心が外に漏れるとは思っていないが、些細なことから彼女に伝わってしまわないとも知れない。
俺は自分の自制心をしっかり叩き起こして、彼女に向かい合った。
「いえ、その……なんだか上の空だったように見えたので。お疲れなんですか?」
気遣わしげにこちらを見るその視線に、俺は恥じ入る思いで一杯だった。
まさかあなたに見惚れていましたなんて言えるわけもない。そんな自分勝手な俺の内心とは反対に、彼女はこちらのことを本当に心配してくれている。いかにも自分が小さな男に思えて、僅かに身を縮こませた。
しかし、これ以上心配をかけることはしてはいけないというのは俺にもわかることだった。恥じ入る思いを一先ず心の奥に押しやり、俺は何とか笑顔を浮かべた。少し表情がぎこちないのは隠せなかったかもしれないが、今はそれでも充分だろう。
「いや、大丈夫だよ。見ての通り、あんまりお客は来ないから、そんなに疲れてないんだ」
実際、頻繁に客が来る店ではないので、俺は疲れとは無縁だったりする。せいぜいが、ごくたまに仕入れで遠出する時に、ちょっと疲れたという程度だ。
しかし、彼女は俺の言葉を疑わしく感じたのか、こちらを見る視線に変化はない。
「そう、ですか? もしお邪魔でしたら、今日はお暇しますけど。無理をして体調を崩されたら、元も子もありませんし」
その言葉に、俺は半ば反射的に言葉を紡いでいた。
「邪魔だなんて、そんなこと! 俺は君がいてくれたほうが嬉しい――」
そこまで言って、自分の失態に気づく。
咄嗟に口を押さえて言葉を遮るが、既に手遅れであることは誰よりも俺が一番わかっていた。
「あ、あの……?」
少しだけ頬を上気させながら、困惑したような声がかけられる。
彼女が戸惑う気持ちも良くわかる。昔から通う本屋の店員から妙なことを言われては、気にしないわけがない。
そしてそれは、俺が最も恐れている事態の序章とも取れるものだった。
俺は、彼女がこの店に来なくなってしまうことを一番恐れている。
もし俺が告白したり、そういった行動をとることで、気まずくなって彼女が来なくなったら……。そう考えると、何も行動できるわけがない。
彼女は管理局のエース・オブ・エース。対して俺は、下町の売れない本屋。どこをどう取れば釣り合いが取れるというのだ。この恋が実るはずがないとわかっているからこそ、俺はこれまでもずっと行動してこなかった。
しかし今、俺の不注意から僅かながらも均衡が破れてしまった。俺の心は焦燥で溢れそうになっていた。このままでは、彼女がもう来なくなってしまうかもしれない。つまり、もう会えなくなるかもしれない。
そんな恐怖に駆られた俺がとった行動は――、
「も、もちろん客としてだ」
「え?」
「ただでさえ、ウチは客が少ないから。やっぱり常連客である君がいてくれると、嬉しいさ」
「………………」
これまで通り、二心のない関係という在り方だった。
ただの行きつけの本屋の店主と、よく来る客。たまに会って、笑って話し、いい気持ちで別れ、再び会う。そんな、心地の良い関係。
六つも下の少女に臆病な、と言うかもしれない。しかし、彼女は俺にとって絶対に失いたくない人だった。それは何も縛り付けるという意味じゃない。他の誰かを選んでしまうのなら、それでいい。それが彼女が幸せになるための選択だからだ。
だから、せめてそれまでは普通に会話できる関係でいたい。大した肩書きがあるわけでもない。特別な力があるわけでもない。そんな俺が望むことの出来る最大限のものが、ほんの少しの間でも彼女と接することの出来る時間。その持続だった。
そんな望みゆえに口から出た言葉は、まさに俺の切なる願いだったと言っていい。
そして、そんな俺の言葉に対して、彼女は一瞬何とも言えない表情を浮かべたように思えたが、すぐにいつものような快活な笑顔を浮かべたのである。
「そ、そうですよね。ちょっと、びっくりしました」
「ははは、いや、わかりにくい言い方でごめんな」
笑う彼女に、俺もまた笑顔で返す。
しかし、先程までと同じやり取りでありながら、互いの間には先刻までにはなかった霞のような何かが壁のように聳えていると思わざるを得なかった。
そう感じるほど、俺と彼女の間に流れる空気は明確な違いをもっているように思えたのである。
――それからも数分、同じように会話を交わしたが、やはり喉に小骨が引っかかったかのような小さな違和感が解消されることはなかった。
いつもはもう暫くお喋りに興じているというのに、今日の彼女は早々に帰ってしまったというのがその証左であるように思う。
俺がそう感じたのと同じように、彼女もまた何か得体の知れない居心地の悪さのようなものを感じていたのだろう。
だとすれば、さっき僅かに顔をのぞかせた何ともいえない表情。あれこそがこの胸に渦巻く違和感を解明する鍵なのではないかとも思うのだが……それも彼女が帰ってしまった今、確認する術はない。
ふぅ、と一つ溜め息をついてカウンターの中で椅子に腰掛ける。
そしてそのまま天井を見上げ、ぽつりと今の俺の正直な気持ちを吐露した。
「やっちゃったなぁ……」
いったい何が原因になったのか、俺にはわからない。
しかし、恐らくは俺の何かが原因で貴重な彼女との触れ合いの時間が歪なものになってしまったことは確かだった。
俺はただ、彼女といつものように楽しく会話したかっただけなのにな……。
そう思いつつ今日のことを振り返り、後悔にもう一度溜め息が出た。
「……けどまぁ、これが最後ってわけでもないしな」
そう、何もこれで今生の別れになるわけでもない。
今日は俺が何かやってしまったようだったが、それなら次回は気をつければいいし、あるいは彼女に気を悪くさせてしまった理由を聞いて改善するのもいいだろう。
彼女は毎日というわけではないが、週に一回ぐらいの頻度では顔を出してくれるのだ。その時にまたこれまで通りの時間を過ごすことができるようになれば、それでいい。
いつまでも悔いたところで、既に起こってしまったことは仕方がない。それなら、今度会った時にどうするのかを考えたほうが、よほど建設的というものだ。
「よしっ」
俺はそう結論付けると、反省はそこまでにして椅子から立ち上がる。
何も決定的に関係に罅を入れるような真似をしてしまったわけでもない。なら、それをいつまでも気にしているのもおかしいじゃないか。
だから俺は次に会った時にどう話しかけようかを考えながら、業務に戻る。
棚の本を整理しながら、脳裏に描くのは今日の彼女の姿だ。その心が安らぐような笑顔を清涼剤のように感じながら、俺は自分のやるべきことに没頭していくのだった。
それから二週間、彼女が店に来ることはなかった。
これは次の週にはまた来てくれると思っていた俺にはかなりの衝撃であった。
ひょっとして、先日の一件はそれほどまでに彼女の気を悪くさせてしまっていたのだろうか、と本気で悩んだほどだ。もし本当にそうであったなら、俺はショックのあまりそこらへんのバイクをかっぱらって衝動的に旅に出たかもしれない。それこそ祖父さんの好きだった歌に歌われていたように。俺はもう15歳ではないけど。
しかし、俺がそんな奇行に走ることがなかったのは、ある事実を新聞で知ったからだった。
毎日届けられる新聞。そこには、ガジェットとやらがここ最近大量に現れているという記事が書かれていた。ガジェット自体は以前から管理世界で目撃されている話を聞くが、ここ最近は組織立った動きを見せているとも聞く。管理局も大変なものだ、と他人事のようにそう思う。
ともあれ、それを読んで、俺は得心がいって安堵を覚えたのである。
なるほど、その事件に対処するために作られたと噂される部署に勤める彼女の忙しさは、想像でしかないが相当なものに違いない、というわけである。
安心したこともあってか、それを聞いた時に彼女と交わした会話を思い出す。はやてという彼女の親友は、もっと即応性の高い部隊が必要だという理念の下でその部署を作ったと彼女は言っていた。
まあ、残念ながら一般的には今のところ、所詮は今回の件のためだけに作られた即席部隊としか見られていないようだが。それを伝えた時の彼女は、「まぁ、まだ発足が発表されたばかりですしね」と苦笑していたのを覚えている。
まあそれは完全な余談である。とにかくいま重要なのは、彼女がここに来ないのは俺が何かしてしまったからではなく、単純に忙しい故のものらしいとわかったことだ。
そういえば新人の教育を任されたとも言っていたから、それは忙しくもなるだろうと部外者ながらにその繁忙さを察する。
となれば、わざわざ忙しい時間に無理をしてまでこんな本屋に足を運ぶことがなくなるのも道理というものだ。
まぁ、そう理屈では納得できるのだが、本心を言わせてもらえるのなら、やっぱり寂しいのだけれども。
やっぱり、週に一度とはいえ思いを寄せる相手の顔を見れるか見れないかでは、全然生活の張りが違う。まぁ、二十五歳にもなる男が「あの子、今日も来てくれるかな? うふふ」なんてソワソワしてもキモいだけだろうと判ってはいるのだが。
それでも、自在にコントロールできないからこその感情というものなわけで。そこまでではないにしろ、生活の楽しみになっているのは事実だから仕方がない。
そしてその生活の楽しみがなくなるのだから、つい落胆してしまうのも致し方ないだろう。
とはいえ、彼女が忙しい人なのはわかりきっていたことだ。まして、俺の抱いている感情は一方的なものなのだから、俺に何かを言うことなど出来るはずもない。
そんなわけで、俺は少しだけ気落ちしつついつもの仕事に精を出すのだった。
結論から言おう。
予想に反して、彼女はわりと店に来てくれた。
とはいえ、前のように一週間に一度という定期的なものではない。二週間に一度だったり、一ヶ月に二度だったりと不定期な来訪ではあったが、来てくれるだけで嬉しい俺としては、嬉しい誤算だったと言わざるを得ない。
どうやら二週間来られなかったのは、単純に部隊が本格稼動したばかりだったために特別忙しかったからのようだ。
彼女が普段から忙しい身なのはただの一般人でしかない俺にもわかること。しかも、そこに新部隊の始動だ。いつも以上に忙しくなっていることなど、推測するまでもない。
しかし、そんなに働いて疲れているだろうに、何故この店まで足を運んでくれるのか。休んでいるほうがいいのではないか。そう思った俺は、そのことを彼女に尋ねたことがある。
そして、その質問に彼女はこう答えたのである。
「このお店にいると、落ち着くんです。なんだか懐かしい匂いがするというか……そんな感じで。それに――」
それに、の先は口に出す前に慌てたように口を噤んでしまったので定かではないが、彼女がこの店を好意的に思ってくれていると判っただけで、俺は本当に嬉しかった。
俺にとってこの店は祖父から引き継いだ思い出深い店であるし、落ち着くという点にも同意だった。
時代を重ねた本は、過去のものを連想させて懐かしい気持ちにさせてくれる。歴史を刻んできたが故の独特な醸成された空気。そこから生まれる重厚でありながら、どこか心に染みる空気は、人の気持ちを安らいだものにしてくれる。
俺は、そんなこの店の空気が大好きだった。それこそ、まだ子供の頃からずっとである。
その店のことを彼女も好きだと言ってくれる。それは、この店に誇りを持つ俺にとって、本当に嬉しいことだった。
何より、自分の好きなものを大好きな人が同じように好きと言ってくれる。それだけでも幸せなことのような気がした。
だからこそ、俺は心からの感謝を込めて彼女に言葉を返した。
「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しい」
それに、彼女は照れたように笑っていた。
そんな彼女だったが、一度ひどく気が立った様子で店に来たことがあった。
九月の十四日だっただろうか。新しく仕入れた教導資料本を紹介しようと彼女の来訪を心待ちにしていた俺も、そのことを切り出すことを避けるほどに常の彼女とは違っていたのだ。
例えるなら、戦場の空気というやつだろうか。もちろん本屋という職しか経験していない俺に、本物の戦場なんてわからない。ただ、よく戦場の空気とはどこかピリッと肌を刺すような空気だと小説などで読んだことがあるから、それを例に出しただけである。
その時の彼女は、まさにそんな空気を醸し出していた。
何も触れれば切れるような危なさがあったわけではない。むしろ、表面的にはやはりいつもの彼女ではあった。ただ、いつも以上に無理をしている、もしくは無理やり自分を押さえ込んでいるかのような危うさを感じた。
流行らない本屋という、毎日にこれといった変化のない生活を送る俺だからだろうか。ほんの細かな変化にも、わりと気がつくことが多いのだ。
だからこそ、俺は予定していた本の紹介は避け、まずは落ち着いてもらおうと奥でお茶を淹れてきてカウンター内の椅子に座るように促した。俺も傍に椅子を引っ張り出してきて、座る。
お茶を飲むように勧め、自分用に淹れてきたカップを傾けながら、しばし二人で無言の時を過ごす。
そうしていると、彼女は思わず零れ落ちたかのような小さな声で、ありがとうございます、と呟いた。
俺はそれには何も応えず、ただ奥のリビング(店と自宅は繋がっている)を示した。店先ではなく、少しでも落ち着ける場所のほうがいいのではないかという思いからだった。
それに彼女は頷いて、俺達は一先ず店の奥へと場所を移した。もちろん、店先に休みの札を出すのは忘れない。あまり人の来ない本屋とはいえ、万が一にも来られると困る。今回の話は、それだけのことも邪魔になるほどに繊細な話のような気がしたからだった。
そして場所を移した後、彼女はぽつぽつと彼女と彼女の周囲に起こったことを話してくれた。
新たに持った教え子達。今追っている事件。機動六課での出来事。そして彼女をママと慕うヴィヴィオという少女との日々。
それはもちろん機密などの情報を省いた説明だったので、ところどころでわかりづらい描写などもあった。しかし、それでも彼女が今いる場所をどれだけ大事に感じていて、そしてその攫われたという少女のことを大切に想っているのかは、余すところなく伝わってきた。
そして最後まで話した彼女は、付け加えるようにこう零したのである。
「……だから私は、何としてもヴィヴィオを助け出してみせます。あの子の、ママとして。私は、ヴィヴィオのことが大好きです。だから、私はママとしてヴィヴィオを助けに行ってきます」
そういった彼女の顔は強い決意に彩られ、凛々しくも美しく、そして力強さに満ちていた。
これこそが管理局が誇る、エース・オブ・エース。多くの魔導師の憧れを一身に受ける英雄(ヒーロー)の姿。
その圧倒されるような雰囲気、こちらの気持ちまで高揚させるその姿は、なるほど彼女をそう評するに相応しいものだった。
この姿に人々は憧憬を抱き、その美しさに魅了されて、彼女のようになりたいと思うようになっていくのだと思えるほどに、その姿は様になっていたのである。
しかし、何故だろうか。
俺はそんな彼女を見て、
半ば無意識のままに、
デコピンをそのおでこにかましていたのだった。
「きゃうっ!?」
何やら可愛らしい声を漏らした彼女は、突然の衝撃に驚いて額を手で押さえた。
その姿からはさっきの圧倒されるようなカリスマ性は微塵も感じられない。少しだけ涙目になって困惑した様子でこちらを見るその姿には、むしろ微笑ましさすらあって、思わず笑みが浮かんでしまうほどだった。
「えっと、あの……?」
戸惑う彼女は、なぜ俺がこんな行動に出たのかが判らないのだろう。
彼女としては、ヴィヴィオというその少女をみすみす攫われた悲しみと悔恨から立ち直り、そうして導き出した決意だったはずなのだ。
なのに、それに対する回答がデコピンだ。それは彼女としても想像していないだろう。彼女の仲間達は彼女に賛同するばかりだったという話だし。
もちろん、俺だって彼女が助け出す案には賛成だ。その子のためにもそれが一番いいだろう。
けど、俺の場合はそれだけじゃないという話だ。
「君がそんなに大切に想っている子なら、確かに君が助け出すのが一番だ。俺もそう思う」
その点は彼女の仲間達とも同じ考えだ。
ただ、俺の場合にはその後に続きがある。
「だけど、そんなに前のめりになって、皆を引っ張るように飛び出していくっていうのは、ちょっと心配だな」
もちろん俺も勝って欲しい。けど、先頭に立って希望を背負い、またその在り方を平然と受け入れてしまうのは、少し彼女の“ママでありたい”という決意とは違う気がした。
きっと、ヴィヴィオという少女が彼女に求めているのは、誰もが憧れるママだけではない。自分のママ、というただその一点、それだけを求めているように思える。
もちろん、俺が彼女に求めているものも、少し違う。そんな彼女も格好いいとは思う。しかし、何よりも――
「君だって、ただの女の子なんだから」
――俺にとって、彼女は
前者を否定するわけじゃない。けど、後者を蔑ろにして欲しいとは思わない。
彼女はどうにも人の期待には応えようとする傾向が強いように思う。これまでの付き合いの中で、俺はそのことをいつも気にかけていた。
もっと、彼女は自分を相手にぶつけてもいいんじゃないかと俺は思う。これまでずっとこのままでいたということは、きっと彼女はあまりそういった相手に出会ってこなかったのかもしれない。
けど、彼女は今ヴィヴィオという少女と出会った。無垢で、世間を知らず、何のフィルターも通さずに彼女を見てくれる存在。
助けてくれた恩人ではなく、管理局のエースでもなく、本当に何も間に挟まずに彼女自身だけしか見ていない少女。
きっと、そんな少女だったからこそ、彼女も娘として受け入れたのではないだろうか。無条件に、ただ彼女であるだけで受け入れてくれる存在。それはすなわち、“家族”に違いないのだから。
「ぁ……ぅ……」
真っ赤になって言葉をなくしている彼女の姿に、やはり笑ってしまう。凛々しいかと思えば、こんなに可愛い。本当に、彼女は素敵な人だった。
――もし、ヴィヴィオという少女を、彼女が受け入れたように。
もしも願いが叶うなら、俺もその一員になれたらいいと思う。無論、叶うはずもない望みだと理解はしているのだが、IFの話に現実的な話は無粋というものだ。
確かに、俺はその子とは違って無垢じゃないし、世間も知って、彼女をきっとフィルター越しに見てしまっているけれど。
けれど、フィルターがあってもなくても、それをひっくるめて彼女自身だと思えるほどには俺は彼女のことが好きだったから。
「確かに君は魔法の天才で、エース・オブ・エースなんて呼ばれる凄い人だ。けど、そのヴィヴィオって子のママだって君だし、単なる女の子な君もいるだろう。だから、あんまり魔導師らしくなりすぎなくても、いいんじゃないか」
天才的な魔法戦をこなし、人々に優しさを向け、決して屈しない魔導師の鑑。それが一般的に人々が彼女に抱く彼女の姿だ。けど、彼女の魅力はそれだけじゃない。それだけが彼女の強さじゃない。
誰もが憧れる管理局の英雄。確かに誇らしい姿だ。
皆の前に立って、先陣を切る姿。格好いいじゃないか。
娘のために、危険を顧みない。無謀かもしれない。けど、愛に溢れている。
可愛い顔で笑って、頬を赤くして照れてくれる。言葉では言い表せないほど、魅力的だ。
一つ一つの彼女に、それぞれの強さがある。そう思うから、他の魅力が持つ強さを無駄にして欲しくなかった。
さっきの彼女は、魔導師としての面がどこか強く出ているように感じた。それは、あのピリッとした空気からもわかる。大きな事件だからこそ付き纏う責任のせいというのもあるのだろう。
しかし、それでも忘れないで欲しい。彼女にはもっと沢山の強さがあって、そしてそれだけ魅力的なんだということを。
だからこそ、ただ我武者羅に突き進むだけの危険な姿勢で臨んで欲しくなかった。
「そういう魔導師で在ることもいいと思うけど、もっと他の要素も大事にして欲しい。そうすれば、魔導師で、ママで、女の子な君として、もっと強い人になれると思うからさ」
どんな君も魅力的なんだから勿体無い、と言える度胸はさすがになかった。それはちょっとクサすぎるかなと思ったからだ。
けど、今の言葉が俺の本心であることに変わりはなかった。
彼女は彼女や皆が思う以上に、魅力的で素敵な人だ。それは惚れた欲目なのかもしれないが、それでも俺はそう思っているのだった。
「だから、あんまりこれが自分なんだって決めないで、これも自分なんだって気持ちで頑張って欲しい。そのほうが、視野も広がると思うし、その、まぁ、らしいと思うから」
そこまで言って、俺はなんだか自分が酷く出すぎた真似をしているような気に襲われ始めていた。
今更という気もするが、さっきまではどちらかというと、いつもと違う様子の彼女をどうにかして落ち着かせようと必死だったのだ。だからこそ、ああも恥ずかしいことを言い切ることが出来たし、自分の感じていることを素直に口に出来た。
素面であんなことは普通は言えない。これがもし彼女のためになれば、という気持ちだったから言えたに過ぎないのだ。
だからこそ、ある程度まで言いたいことを言った後、急に不安になってきたのだった。俺の気持ちそのままに話した彼女の印象が、彼女にどう受け取られたのか。彼女に恋する身としては、気が気ではなかったのである。
そんな内心の怯えを抱えながら、俺は彼女の顔を見る。そして、その表情に驚くと同時に見惚れてしまった。
まだほんの少し頬に赤みを残した彼女は、どこかすっきりした様子で柔らかく微笑んでいたのである。
「やっぱり、ここに来てよかったです」
花が咲くような、とはいかにも使い古された表現だが、それでもその表現がまさにこの時のために生まれたと思えるほどに、彼女の笑顔は輝いて見えた。
「ここは、本当に安らかで、気持ちを整理することが出来ました。古い紙の落ち着いた匂い、静かな空気……。本当に、来てよかった」
彼女にとっての魔法のように、俺が心から自慢できるこの店を褒められて、嬉しくないはずがない。俺はその言葉に素直に喜んだ。
だからこそ、次に繋げられた言葉は、完全に不意打ちであった。
「――それに、あなたに会えて」
「………………え?」
思わず発した間抜けにすぎる、問いかけのような声に、彼女は答えずにすっと性急に立ち上がってこちらに背を向けた。
俺はもはや今の状況が何がなんだかわからないといった様子であった。それほどまでに心の内は混乱していて、正常な思考の範疇にいなかったためである。
「今日はありがとうございました。また来ます」
そっけなく言い放った彼女は、こちらに背を向けたままリビングを出て、そのまま店からも出て行ってしまった。
ドアに取り付けられたベルの音が、小さくリビングに響く。呆然と彼女が去るのを見送っていた俺だったが、しかしある一点に偶然にも俺は気づいてしまっていた。
リビングから出て行くときに、向けられた背中からわずかに見ることが出来た彼女の耳は、先まで真っ赤に染まっていたのだ。
彼女と最後に会った五日後。世界に激震が走った。
ジェイル・スカリエッティと名乗る男の一味による、管理局への宣戦布告と、巨大な戦艦型ロストロギアのためである。
この突然現れた巨大すぎる脅威に、社会は大混乱に陥り、誰もが不安を口にして身を寄せ合った。逃げ惑い、脅威から離れようと都市から出ようとする人々の群れは、まさしく棲家を追われた動物のようであった。
しかし、俺の心には何の不安も浮かんではいなかった。
理由は簡単で、彼女が負けるはずがないと信じていたからだ。
そして、その信じる通りに彼女は勝ったようだから、まったくもって彼女は本当に凄い。崩れ落ちる戦艦の姿を離れた避難所の一角から見つめながら、俺は遠いものを見るような心地になるのだった。
JS事件と名づけられたこの事件は、当初から彼と彼の悪事を追っていた機動六課が中心となって解決。構成メンバー数の少なさ、メンバー個々のスキルの高さから少数精鋭を体現したかのような部隊といわれ、またその部隊から一人の死者を出すこともなく未曾有の事態を収集したことから、機動六課は“奇跡の部隊”と呼ばれるようにもなっていた。
事件の詳細を新聞やネットで見ながら、俺はカウンターで息をつく。
またしても彼女は遠いところの住人になってしまったなぁ、ともはや苦笑すら浮かぶほどだ。
奇跡とは、これまた一般人には縁のない言葉である。
そんなことを考えながら、今日もまた俺は本屋の業務に勤しむのだった。
*
そうして時が過ぎて十月。
既に事件からは半月近くの時が経っていた。
その間、彼女が店に来ることはなく、俺は他の常連さん方と世間話をしつつ、誰もいないときには本を読んだり仕事をしたりという生活を繰り返していた。
これが、毎日のように続く俺の日々の過ごし方である。本を読む時間があるのは、基本的に仕入れるべき本の数が圧倒的に少ないせいで、そこまで仕事が長引くこともないためだった。
そんなわけで、今日も今日とて俺はカウンターの奥の椅子に腰掛けながら読書を続ける。
そうして空想の世界に浸っていると、カランとベルが鳴って来客を告げた。読んでいた本に栞を挟んで閉じ、入り口に立つお客様に目を向ける。
そこに立つ姿を視界に納めて、俺は心からの歓迎の笑顔を向けた。
「いらっしゃい」
「はい、お邪魔します」
「おじゃましまーす」
彼女と、彼女に手を引かれた小さな女の子。髪の色や瞳の色を見るに、その少女こそが彼女が話してくれたヴィヴィオなのだろう。彼女の手を精一杯に握るその姿は、なるほど可愛らしく愛らしい。
そして幸せそうな笑みをヴィヴィオは浮かべていた。それは彼女がいかに慕われているかを明確に表しているものだ。その事実に、俺は心の内が安らぐのを感じていた。
カウンターに歩いてくる二人に笑みを向け、早速その少女に声をかける。
「はじめましてお嬢ちゃん。お名前を教えてくれるかな?」
「はじめまして! ヴィヴィオっていいます!」
ヴィヴィオはそう元気よく挨拶すると、ぺこりと可愛らしくお辞儀をして見せた。
何とも和む仕草に頬を緩めつつこちらも自己紹介を返し、よろしくと言って小さな手と握手を交わす。
その後、前回彼女に紹介し損ねた本について話し始めた。
「そうそう、前に仕入れた本がまだあるんだ。教導対象が少し特殊になるかもしれないけど――」
「あ、あの!」
しかし、俺の紹介文句は彼女の一声で遮られる。
彼女にしては大きめな声だったこともあり、少し驚いた俺は言葉を止めて彼女を見た。
そうして彼女を観察してみると、どこか緊張したように見える面持ちと上気した頬がどうにも見慣れた彼女とは違っているようだった。
一体どうしたのだろうか。俺がそんな風に訝しんでいると、彼女は唐突に口を開いた。
「あの、私、次の休日は空いているんです」
「へぇ、そうなんだ。忙しかったみたいだから、よかったじゃないか」
「それで、ですね……」
「ああ」
言いよどむ彼女は、なんだかいつも以上に可愛らしい。
よくよく見てみれば、唇にリップを引いていた。他にも、薄っすらと化粧をしているようにも見える。
光を反射する唇が、どきりとするほどに官能的だった。
それに、赤くなった頬は少女のような初々しさで、実に可愛らしくも美しい彼女の魅力に溢れていた。
彼女の手を、幼い手がきゅっと握る。まるで勇気を分けるかのような、そんな仕草。それを裏付けるように、ヴィヴィオは彼女に、頑張ってと声をかけた。
「――……」
その様子を見て、唐突にある可能性に思い当たった。それはありえないとずっと思ってきたこと。そして同時に俺が心から望んでいることでもあった。
そんなことがあるわけがない。理性はそう否定しているのに、夢のような妄想が脳裏にこびりついて離れない。
都合のいい夢を見ようとしているに違いない。そう俺は思った。いや、そもそも俺の勘違いで、彼女は俺の想像とは全く違うことを伝えようとしているだけなんじゃないのか。
様々なことが頭をよぎる。妙な緊張で、どうにかなりそうだった。
そうかもしれないという期待と、そんな馬鹿なという諦めと。二つの思いが胸の中を去来する間にも、彼女の美しい唇のラインは揺れ動いて言葉を紡ぎだそうとしている。
俺は視線を縫い付けられたかのように、その動きから目が離せない。そして、今なら10km先で落ちた針の音でも聞こえるんじゃないかというぐらいに、耳の神経を尖らせていた。
そして、ついに彼女はその言葉を口にした。
「あの、今度、私と一緒にお出かけしてくれませんか?」
真っ赤になってそう言った彼女に、俺もまた赤くなる。
そして、当然ながらその問いに返す答えを、俺は一つしか持ち得ていなかったのである――。
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